MBA管理会計/本多慶行
現在、スミダコーポレーション株式会社のCFOである著者が、D&MホールディングスCFOの時代に書いた本。
MBA管理会計とあるが、第一部は企業の先進事例として、管理会計という枠にそこまで限定されていない印象。
第二部以降は管理会計の基礎となるが、費用を管理可能・不可能で区分することによる意思決定への影響を解説している。
基礎的な内容に、著者の経験によるエピソードを追加したというイメージで
管理会計の詳細というよりは会計を経営に生かすということの実例といったところか。
【目次】
第1部 管理会計の現場
第一章 ビルド・アップ D&Mの朝鮮
第二章 連結経営 ペプシコのケース
第三章 グローバル経営 シスコシステムズのケース
第四章 シスコシステムズのバーチャルクローズ
第2部 基礎理論
第五章 管理会計とファイナンス部門の役割
第六章 意思決定に役立つ管理会計の基礎理論
第七章 経営管理に役立つ管理会計の基礎理論
第八章 社内収益性分析
第九章 管理会計の最新手法
【抜粋】
第1部
- ペプシコでは、CFOがGMと共同で損益責任を持つ。CFOは製造原価の低減、販売費・一般管理費の削減を検討し、GMは売上を伸ばす方策を営業、マーケティング担当者と相談して決める。
- シスコは売上高(受注高)重視の経営。会社全体が営業組織であり、重視されるのは売上高の他は経費と経費率だけである。損益責任は本社だけが負うシンプルなシステムとなっている。
- シスコではspan of control(直属の部下の数)またlayer(本社の末端からCEOのジョン・チェンバースまでの階層)を組織設計上の指標にしていた。いたずらに組織の階層を深くすることを避けるために、上級管理職ほど直属の部下の数を増やした。
- シスコが実現したバーチャルクローズとは、ITを活用して経営上不可欠な財務情報を継続的にモニターしていくという概念。受注状況、値引き、出荷を受けての売上、売上総利益はほぼリアルタイムで把握したい。マーケットシェアは四半期ごとに掴みたい。損益計算書、貸借対照表は月次で欲しい等、企業によって経営上不可欠な情報とそれを把握する頻度は当然異なる。
- バーチャルクローズを実現するための6つの要素
- ファイナンス部門の普遍的な役割
- 製造原価、販売費及び一般管理費を変動費・固定費に分けて捉え、固定費のうちでも回避可能な費用と回避不可能な費用に分けることで、製品の取扱い是非や販売数の増加・減少による影響をより正確に捉えることができる。
- 変動費で原価を捉え、貢献利益で意思決定をするのが必ずしも正しいとはいえない理由
- 赤字で商品を売るとういのは、変動費はカバーするが製造原価またはフルコストまではカバーしないという意味で赤字。
- 長期的には採算が取れるが短期的に業績が悪化する意思決定について、毎年評価されるマネジャーは直近の業績評価に引きずられて、長期的な採算を犠牲にするかもしれない。本来マネジャーにとってもらいたい行動と矛盾しない評価方法をとるべきである。
- 予算設定の意義
- 管理職にある人が今後について考え、予算設定プロセスを通じて職責を明確にする
- 予算を経営成績を評価するときのフレームワークとして機能させる
- 予算設定を経営方針、目標のコミュニケーションのプロセスとする
- 管理職にある人が今後について考え、予算設定プロセスを通じて職責を明確にする
- 収益性の比較観点の例
- 中核事業と非中核事業
- 同種事業別比較
- 予算対比
- 時系列比較
- 製品群別、製品別
- 地域別
- 販売チャネル別
- 中核事業と非中核事業
- BSCの財務の視点における目標設定は、成長期・安定期・収穫期に分けて設定する。
- 成長期:「売上を拡大する」(新商品の売上高の割合向上、一人当たり売上高の拡大等)
- 安定期:「利益を出す」(顧客ベースへの浸透、費用の削減目標等)
- 収穫期:「投資を抑える」(利益が出ていない得意先への売上の抑制、総資本利益率は使わない等)
- 成長期:「売上を拡大する」(新商品の売上高の割合向上、一人当たり売上高の拡大等)
- BSCの顧客の視点の測定指標の例
- マーケットシェア
- 新規顧客の獲得
- 顧客の維持
- 顧客満足度
- 顧客の収益性
- マーケットシェア
- 内部ビジネスプロセスの視点
- イノベーションプロセス(市場の発見、製品とサービスの創造)
- オペレーションプロセス(製品・サービスの生産、製品・サービスの提供)
- アフターサービス(アフターサービスの提供)
- イノベーションプロセス(市場の発見、製品とサービスの創造)