IFRSのしくみ/有限責任 あずさ監査法人 IFRS本部


IFRSの概要から、資産・負債、収益・費用の取扱い等を解説。
詳細な実例にまでは踏み込まないが、概要を理解する必要がある場合には良いか。


【目次】
第1章 IFRSの概要
第2章 IFRSの考え方
第3章 IFRSの財務諸表
第4章 資産をめぐる規定
第5章 負債をめぐる規定
第6章 企業結合と連結財務諸表
第7章 金融商品と外貨建取引
第8章 収益・費用その他の規定


【概要】

  • IFRSの適用状況
    EU 連結財務諸表に強制適用(2005年)
    アジア諸国(中国・韓国等) IFRSベースの自国会計基準を導入(2007年)
    米国 外国企業は米国基準の差異調整表なしで財務諸表提出可能
    国内企業はUS GAAPのみ
    IFRS採用にかかる意思決定は未了
    日本 要件を満たす上場企業はIFRS任意適用
    単体は日本基準のみ(確定決算主義前提の税務上の取扱い等が課題)
  • IFRSの特徴
    1. 資産負債アプローチ。資産・負債の増減から、収益・費用を算定する。
    2. 原則主義。産業別の詳細なガイダンスは存在しない。
    3. 公正価値重視。測定日における、市場参加者からみた、出口価格を公正価格という。(取引コストは考慮しない)
  • IFRSにおける財務諸表の構成要素
    IFRS 日本基準
    財政状態計算書 貸借対照表
    純利益及びその他の包括利益計算書 損益及び包括利益計算書
    株主持分変動計算書 株主資本等変動計算書
    キャッシュフロー計算書 キャッシュフロー計算書
    注記 注記
  • IFRSの財務諸表の特徴
    1. 特別損益の区分なし(経常損益の表示なし)
    2. 費用項目の分類は性質別(売上原価、販管費等)のほか、機能別(原材料費、人件費等)も認められる
    3. 流動性配列法のほか、固定性配列法も認められる
  • IFRSでは注記で以下の項目に関する詳細な開示を実施。
    1. のれん:期首から期末までの帳簿価額の調整表(残高・追加・減損等を含む)
    2. 公正価値:公正価値で測定される資産・負債等
    3. 金融商品:リスクの定性的情報および定量的情報
  • 事業セグメントは以下のすべてに該当するものをセグメントとして定義し、損益、資産、負債等の額を開示。財務諸表との調整表もあわせて開示。
    1. 収益を獲得し費用を負担する事業活動に従事
    2. 企業の医師決定者が資源配分の意思決定および業績評価の目的で経営成績を定期的に検討
    3. 分離した財務諸表を入手可能
  • 適用初年度は、比較対象期間として前期分の財務情報もIFRSに基づいて作成することとなり、前期がIFRS移行日となる。
    また、可能な限り過年度に遡ってIFRSを適用し、移行日までの累積的影響額を利益剰余金の調整として認識する必要がある。
  • IFRSの遡及適用の免除規定として、企業結合については従前の基準に基づく数値を引き継ぐことが可能。また、過年度に行われた見積りは現在の情報に基づいて修正されるべきではないため、遡及適用が禁じられる。
  • 資産に関する特徴(特に日本基準との差異)      
    棚卸資産 原価に、購入原価、加工費だけでなくその他の原価を含む
    評価減の原因がなくなった戻し入れ
    有形固定資産 交換により取得した場合の取得原価は、引き渡した資産の公正価値
    取得原価には購入価格、稼動等にかかる費用、資産除去費用を含む
    原価モデルか再評価モデルのいずれかで事後測定
    コンポーネントアカウンティング 有形固定資産のうち、重要な構成要素は別々に減価償却を実施
    無形資産 取得原価で当初認識。原価モデルか再評価モデルで事後測定
    耐用年数が有限であれば規則的に償却。そうでなければ減損テスト
    自己創設無形資産 研究:発生時に費用処理
    開発:要件を満たす場合認識
    投資不動産 公正価値モデルか原価モデルのいずれかで会計処理
    減損 グルーピングの単位が細かくなる可能性あり
    グルーピング単位はキャッシュインフローで判断
    減損損失の認識 回収可能価額と帳簿価額を比較、回収可能価額が下回れば減損
    戻入れの兆候があれば戻入れを実施
    のれん 償却せず毎期減損テストを実施
    売却目的の非流動資産 減価償却をストップ
    帳簿価額と売却費用控除後の公正価値のいずれが低い金額で測定
  • 負債に関する特徴(特に日本基準との差異)
    退職後給付 確定拠出では、日本と同様拠出を費用計上
    確定給付では、過不足を財政状態計算書上で認識。積立超過の場合、企業が利用可能な範囲で計上
    数理計算上の差異は純損益ではなくその他の包括利益に含める
    退職給付以外の従業員給付 短期従業員給付は費用計上
    解雇給付は給付の性質に応じて計上時期が異なる
    その他の長期従業員給付は積立状況を資産・負債として計上
    引当金 現在の債務があること、経済的便益を持つ資源が流出する可能性が高い、金額を信頼性をもって見積もることができるという要件で判断
    修繕引当金等は現在の債務ではないため、引当金として負債に計上できない
    資産除去債務 引当金の一種として処理
    相手勘定は有形固定資産または棚卸資産(発生原因で判断)
  • 連結に当たっては、親会社・子会社の決算日は原則統一。異なる場合、子会社は連結決算のために追加的な財務諸表を作成。但し、実務上困難な場合、3ヶ月以内の財務諸表を利用可能。
  • 取引ごとに収益認識の会計処理を実施。マイレージやポイント収益の繰延が必要(引当金での対応が不可)
  • サービスの提供は信仰基準で会計処理。完成基準は認められない。