権威と権力/なだいなだ
高校生のころによく読んだ、精神科医の著者による、
人に言うことを聞かせる、人が言うことを聞く、とはどういったメカニズムによるものか、
権威と権力という二つの力を中心に語っている。
権威とは自発的にいうことを聞かせる、権力とは強制力をもっていうことを聞かせる、
ということを日常のエピソードから導きだし、権威/権力に頼らない説得の必要性を説く。
権威に頼るのは、自分の判断を人に委ねるとき。
自分の頭で考えることを放棄しないで人生を送りたいものだ。
目次
はじめに
第1章 失墜した権威
第2章 権威と権力
第3章 権威とは何か、権力とは何か
第4章 いうことをきく心理
第5章 判断と権威
第6章 日常の中で
第7章 説得の方法
第8章 権威と反権威
第9章 まとまりなき社会
おわりに
<抜粋>
第1章 失墜した権威
- 権威には、個人に属するもの、役職に属するもの、組織に属するものがある
- 権威は、一人では取り戻せない
第2章
- クラーク博士は校則を作らず、「紳士たれ」の一言で十分とした。しかし、クラーク不在となった後には校則が作られた。
- 個人的な権威の場合には、権威を持った者と感じるものが直接触れ合うが、地位の権威の場合には権力が間に割り込む。
第3章
- 権威は自発的にいうことを聞かせる。権力は無理にいうことを聞かせる。
第4章
- 権威に対する態度の始まりは親子の関係。
- 人は不安から権威に頼る。権威には内部の不安が、権力には外部からの恐怖が対応する。
第5章
- 人が判断を依存するところに権威は生まれる。
- 医者に権威は必要か。権威で治すのであれば、それはまじないと変わらないのではないか。
- 医者の権威が落ちたのではなく患者の知識レベルが上がった。
- たまたまそのタイミングで治っただけでも名医になり、権威を持つ。それは権威を感じる側が判断を依存することができるから。
第6章
- 権威を得ようとするものは、自分の知識ではなく、相手の無知をあばきたてる。
- 自分自身が無知であることと相手が全知であることは本来別。
第7章
- 脅迫は暴力で従わせる。命令は権力で従わせる。
- 命令はするものとされるものの間に、階層が開けば開くほど強制力を増す。
- 説得には暗示による説得と理による説得がある。暗示による説得の1つに権威による説得がある。
第8章
- 理で説明できないもののほうが世の中には多くある。好みもその1つであり、権威的になりがち。
- 権力を否定する者であっても権力を奪おうとする者がある。本来は権力を否定するならば権力を奪うのであってはならない。
第9章
- 権威は従わない人間の存在によって傷つけられる。非暴力は暴力を奪わないが、従わないという抵抗。
- 人が権威を求めるココロは、権威にまとわりつく役職などを取り除いてもなくならない。風車を壊しても風は吹いている。