研究者の仕事術/島岡要
プロフェッショナル根性論として書かれた連載をとりまとめた書籍。
研究者が生産性高く働くための考え方について書かれているが、研究者以外の知的労働者にも共通して言えることだと考えられる。
その要諦は冒頭に要約されており、以下のステップにまとめられている。
ステップ1.興味を持てる得意分野を発見する
ステップ2.最初は自分で学ぶ
ステップ3.支障を持つ
ステップ4.現場で恥をかく
ステップ5.失敗を恐れつつも、果敢に挑戦する
ステップ6.自分の世界で一番になり成功体験を得る
ステップ7.研究者としての自信をつける
ステップ8.井の中の蛙であったことに気付き、打ちのめされる
ステップ9.すべてを知る事はできないことを理解する
ステップ10.それでも、自分の新しい見識を常に世に問うていく(謙虚ではあるが臆病ではない)
日本のビジネスパーソンは35歳で成長が止まると言われているらしいが、
常に成長し続けるために、こうした姿勢を身につけたい。
【目次】
その1 プロフェッショナル研究者への成長の道
その2 「好き」よりも「得意」にこだわる仕事術
その3 プロダクティビティーを上げる時間管理術
その4 自分の世界で一番になる
その5 批判され/批判して自分を磨く「フィードバック力」
その6 変化に対する苦痛・恐怖を克服する
その7 自分のストーリーを「物語力」
その8 説得力のあるプレゼンテーション
その9 日本人中年男性研究者のための英語力向上戦略:人間力英語術
その10 検索される自分:発進力
その11 創造性とは
【抜粋】
<その1>
- 論文はアブストラクトとして数秒で消費される
- 仕事にはお金を儲けるという重要な機能以外に、仕事をとおした自己の成長と、さらに成長することにより新たな大きな仕事を成し遂げる機会を得るという仕事と人間的成長の正のフィードバックループがある
<その2>
- SBA仕事術の実践法は、プロジェクトやキャリアの方向性(専門性のトピック、研究方法・戦略、研究環境、研究哲学、ワークスタイル)を自分の「強み」に合致させ、その方向性を優先する
- バッキンガムの行動分析SIGN。以下の4つの感覚を感じる。
?Success:効率的に遂行できるという成功体験
?Instinct:その活動をしたいという潜在的な欲求
?Growth:その活動の最中には充実感
?Need:遂行後にはこのうえない達成感
- 強みとは、習慣的に繰り返す思考・行動(タレント)の上に、スキルとナレッジを学ぶことにより形成される
<その3>
- 生産性を上げるためには以下の2つが重要
?内部RAM空きスペースの最大化
?アクション指向
- マイルストーン、目標を紙に落として明確にする
<その4>
- 自分の世界で一位になるためのポイントは、セスゴーディンのDipの考え方。Dipとは、誰もがぶつかる壁のこと。
- Dipの途中でquitしたくなったなら本当に辞める事を決定する前に次の3つのことを確かめる。
?パニックになっていないか
?アプローチは正しいか
?パラメーターを変えてみる
<その5>
- 自分が正当に評価されたければ、相手を正当に評価し、フィードバックを与える力を磨くしかない
- 建設的なフィードバックを与える能力のほうが、否定的な批判をする能力よりもはるかに社会には必要とされている
- フィードバックを与えるポイントは以下の3つ。
?オピニオンではなくアナリシスを
?適切な内容を、適切なタイミングで
?相手を気持ちよくさせる何かひとことを
- フィードバックが損失となるポイントは以下の3つ。
?すばらしいアイディアだが・・・という一言が部下から仕事のクレジットの一部を上司に与えることとなり、モチベーションを下げてしまう
?フィードバックには常に何らかのコストを伴う、メリットが小さい場合には敢えてフィードバックをしないという選択肢もある
?今から私が言わんとしていることは、本当に言う価値のあることなのか、と自問する
<その7>
?生き生きと語る
?信憑性/正当性をもって語る
?意味付けを語る
<その8>
- メッセージが伝わらない理由は以下の5つ
?何が重要なポイントかわからない
?聴くだけ時間の無駄
?話の流れが無い
?細かいことにこだわりすぎる
?長過ぎる
<その11>
- 同一の発見が同時期になされることがある。社会に集積された集団の叡智が一定以上となれば、アイディアは皆の目の前を漂う
- 創造性とは必然的に怒ろうとしている発見を誰よりも早くつかみとる「効率の良さ」