齋藤孝のざっくり!世界史/齋藤孝
世界史の流れを5つの力を中心に語る本。
5つの力とは、
であり、これらを軸に流れを振り返る。
世界史を勉強した細かい記憶はなくなっていくが、ときどき全体の流れを振り返って、
大局的に捉えた内容は記憶から消えないようにしたいものだ。
【目次】
第1章 西洋近代化のパワー モダニズムという泊まらない列車
1 近代化パワーの源流はどこにあるのか
2 資本主義はキリスト教から生まれた
3 軽視された近代の「身体」
第2章 帝国の野望史 なぜ君主たちは領土を拡げつづけようとするのか
1 人の野望が生み出した「帝国」という制度
2 成功する帝国、失敗する帝国
3 世襲こそが帝国崩壊の第一歩
第3章 欲望の世界史 「モノ」と「あこがれ」が歴史を動かす
1 世界を二分する近代の原動力 コーヒーとお茶
2 世界史を走らせる両輪 金と鉄
3 あこがれが人を動かす ブランドと都市
第4章 世界史に現れたモンスターたち 資本主義・社会主義・ファシズムが起こした激震
1 現代世界を支配する資本主義
2 社会主義という二十世紀最大の実験
3 危機が生んだファシズムという魔物
第5章 世界史の中心にはいつも宗教があった 神様たちは本当に世界を救ったのか?
1 世界史を動かすユダヤ・キリスト・イスラムの宗教三兄弟
2 暗黒なんかじゃない!見直される中世
3 なぜ現代社会がイスラムを欲するのか
【抜粋】
<第1章>
- ヨーロッパの柱とは古代ギリシア・ローマ、エジプトを中心とした地中海文明
- 古代ギリシアを理解するキーワードは「直接民主政」。ローマでは共和政から元首政までの期間パクスロマーナを迎え、繁栄した。
- 392年ローマ帝国がキリスト教を国教としてからの1000年間、ヨーロッパは変化の少ない期間を迎え、代わって、イスラム世界、モンゴルが世界史の中心となる。中世の仮死状態の象徴が聖職叙任権を巡って争い、最終的に皇帝が敗北したカノッサの屈辱。
- ルネサンスは世俗対宗教の対立構造の転換点。人間の肉体が持つ美しさを認める動き。
- 宗教改革の重要な点は、「知の独占」の打破。(聖書のドイツ語訳によって民衆に知を取り戻した)
- 資本主義を生んだのはプロテスタント、特にカルヴァンの教え。仕事が神への奉仕につながるとされ、その上禁欲が善とされていたので、仕事の拡大に財が向けられた。
- 視線が人を支配する。フーコーの「監獄の誕生」におけるパノプティコン。
<第2章>
- 帝国の野望は拡大。領土を拡げること自体が目的化し、それが原因で崩壊する。
- 公衆の面前での表現力や演説力がリーダーを決めるというのは、ギリシア・ローマから続く西洋の伝統。ブルータスとアントニウスの演説合戦の演劇では、観客が歓声を上げることで参加する。
- カエサルは征服した土地の宗教には手を付けず、ローマの市民権を与えることで義務を課して統治した。
- ローマ帝国の衰退の原因は投票権だけを持ち堕落した無産市民の増加。
- イスラム帝国では、改宗すれば異民族でも人頭税が免除される、平等な税制を用いた。
- 自分の遺伝子を残したいという欲望が帝国拡大の源泉。
<第3章>
- 西洋の「度を越してやる」という仕事ぶりを支えてきたのがコーヒー。
- コーヒーが持つ覚醒的な意味合いが近代を支えた。中世のワインに代わり、産業革命以降コーヒーの消費量が拡大する。
- コーヒーを作らせるために奴隷を使い、それを飲み覚醒した人々が支配するという構図が確立した。
- モノへの欲求がモノを算出する土地を支配したいという植民地化につながる。
- アジアの香辛料とアメリカ大陸の金をヨーロッパにもたらすための貿易によって植民地化が進められた。
- 金は常に、その時代の最高権力の下に集まる。
- 世界史は文化/経済のセンターが移動する歴史として捉えられる。経済のセンターの移動後には何も残らないが、文化のセンターの移動後には文化の足跡が残り、ブランドになる。(ローマ、フィレンツェ、パリ、ウィーン等)
<第4章>
- マルクスの定義による資本とは、自己増殖を行う価値の運動体。
- 資本主義は人間の本性から生まれたものであり、社会主義は理性によって人工的に作られたもの。
- 社会主義は、経済的なポジションによって考え方も決まってしまうとし、こうした格差を生む資本主義を倒し、プロレタリアートを解放する事を目指した。
- インド、中国が発展することで、持てるものが大多数を占めることとなった際に資本主義は耐えられるのか。
- カールポパーによる資本論への反論:反証可能性が低く、科学とは言えない。
- ウェーバーは官僚制によって社会主義は崩壊すると予測し、それは現実のものとなった。
- ファシズムを支えたのは「生の哲学」と「社会ダーウィニズム」
- 第二次世界大戦はファイズム対資本主義ではなく、植民地を既に持っている国とそうでない国の戦い。
<第5章>