体制維新ー大阪都/橋下徹 堺屋太一

大阪府知事から大阪市長となった橋下徹氏が、
大阪の問題点、都知事時代の経験からくる政治の進め方について語る本。

組織に明るく、政治とは体制を変えることだと断言するやり方は、
マネジメント論としても面白い、

大阪は日本に先駆けて問題を体験している。そしてそれを乗り越えるという点でも先駆けになる、ということが実現すれば、
問題先進国と呼ばれる日本も世界に先駆けて問題を乗り越えることができるようになるだろうか。

【目次]
はじめに
第一章 大阪の衰退、日本の衰退
第二章 なぜ「大阪都」が必要か
第三章 改革と権力闘争
第四章 「独裁」マネジメントの実相
第五章 「鉄のトライアングル」を打ち破れ
第六章 大阪から日本を変えよう
おわりに


【抜粋】
<第二章>

  • 都市間競争のための広域化はすでに世界の大きな流れで、台湾、ロンドン、パリ等で検討されている。
  • 財務省は赤字を減らそうとはしていない。財政赤字を増やし、増税をして影響力を強めたいと考えている。かつての軍務官僚が敵を次々に増やしていったのと同様。
  • 大阪市は住民サービスを考えるには大きすぎ、広域行政区の首長として全体を考えるには小さすぎる。

<第三章>

  • 政治家の使命は政策を作ることではなく、体制を変えること。体制を変えるとは、既得権益を剥がすこと。そして権力の再配置は話し合いでは解決しない。

    <第四章>

  • 政策を語ることと組織を動かすのは全くの別物。中国では行政組織で実績をあげた長が中央であがっていく。
  • 大阪府知事時代に行った仕事は府全体の仕事の1%程度でしかないが、質的には重要な1%を選び、行うのが政治家の仕事。
  • 政治と行政の役割分担における意思決定のルールは以下の3つ。2、3が政治家の真骨頂。
    1. 原則は行政的な論理に勝っている方を選択する。
    2. 論理的に五分五分ということになれば、僕が政治的に選択する。これは感覚。
    3. 行政的論理に負けていても、これはというものは政治決定で選択する。
  • ダム建設中止の決定をすれば、そこから先は現場職員が必死に完遂してくれた。政治家は決めるだけ。
  • 政治は情、勘、行政は理性、論理
  • 終戦直後に作られた現行の教育制度を頑に守る必要はない。軍国主義の時代とは違うのだから、弊害を考えて必要な体制変更を行えばよい。
  • 教育だから何でも自由にしていいというのは違う。信を得た法律のもとで自由にやるのが当然。
    <第五章>
  • 政治と行政の峻別を徹底すべき。統一地方選の前には、府庁広報にすら顔写真を出さなかった。
  • 大阪市営地下鉄は市の税金を数億円使って「市営地下鉄はこのままでいい」というキャンペーンを打った。
  • 大阪都構想は大阪の実情にあわせたもの。他の大都市にも必ずしも合うとは最初から考えていない。
  • 横浜は神奈川というよりも東京との一体性が高く、特別市構想にも賛成できる。だが大阪の特別市構想は反対だ。
  • 都市は国のエンジン。日本には東京に加えてもう一つ大きなエンジンがいる。イギリスはロンドンという大エンジン。中国は大エンジンを複数。
  • 選挙制度で政治家の視点は変わる。国会議員といえど、選挙区は小さな地元。