沖縄「自立」への道を求めてー基地・経済・自治の視点から

沖縄経済の自立の可能性について、沖縄に住む側の立場から語られた論文集。
沖縄経済は基地がなければ自立できないのか、という問題について、基地以外の土地利用によって得られる経済効果をふまえて考える。

どちらか側だけの主張では解決できないだろうが、基地があることによる経済援助なしに、経済的自立が可能か、
という視点は沖縄の外にいるとあまり考えないものかもしれない。
沖縄外では、基地があることで経済的に立ちいくというのが常識的なものとなっている感があるが、社会的な弊害が反対のメイン論拠かと考えていたが、経済的にも基地はマイナスだという主張も視野に入れておく必要がある。


【目次】
第?部 沖縄「独立論」と沖縄経済
第?部 沖縄の基地を問い直す
第?部 沖縄振興開発の効果を疑う
第?部 持続可能な発展の可能性をさぐる

【抜粋】

  • 沖縄県民の強い反基地感情は以外にも国の政策にはほとんど影響を与えない。カルダーはその原因を「保障型政治」に求めている。「保障型政治」とは、「要求を聞き入れる者と支持者に物理的な満足をもたらすような要求をみたし、それを喧伝する政策」である。
  • 沖縄本島の希少な土地の20%もが基地に取られて、市場価値を生まない用途に当てられていることは、はなはだしく公正を欠く状況であると言わなければならない。わずかに県GDPの5%弱に相当する「基地収入」があがるだけである。
  • 沖縄は資本の投資先として魅力がない。以下をふまえて、「身の丈の経済」に甘んじることが必要。
    1. 資源に乏しく
    2. 市場は小さい
    3. 賃金はやや低いが、格差をもっての低さではない
    4. 技術力が高いとか、労働の効率がいいということもない
  • 基地を維持するコストには政治的・社会的・生態的なコストも含まれる。このようは非経済コストは、計測することが困難なゆえに考慮されることはないが、決して無視することのできない大きな要素である。
  • 沖縄振興は、県や市町村ではなく政府の責任で行われている。
    1. 政府が沖縄振興法を制定する
    2. 内閣総理大臣府が沖縄振興開発計画を策定する
    3. 沖縄に我が国最高の効率補助を適用する
    4. 沖縄振興開発予算は内閣府が一括計上する
  • 沖縄の金融特区は欧州のダブリンをモデルとしているが、産業振興の牽引力とはなっていない。ダブリンの特徴は以下の点。
    1. 政府の積極的な介入
    2. 法人税率10%適用
    3. 産業開発庁による積極的なマーケティング活動
    4. 内閣府と業界団体による効率的な運営仕組みづくり
    5. アイルランド中央銀行による迅速な金融機関の許認可
  • 戦後沖縄で用いられた「B円」は、日本円の三倍という「極端な円高政策」が実施されていた。これにより沖縄は、極端な円高政策による産業空洞化など一連の製造業弱体化効果をプラザ合意の前に体験した。
  • 脱基地で成功したのは沖縄本島中部の北谷町だ。基地返還後の開発により、ハンビーは、税収が返還前の52倍に、経済波及効果は81倍、雇用は22倍に増えた。メイモスカラーは、税収が38倍、経済波及効果は17倍、雇用は100倍を超える、という。
  • 米軍嘉手納飛行場は、成田国際空港関空を超える空港能力を餅、米軍向けに建設された高価な戦闘機の掩体施設や巨大な格納庫は海外企業からも注目されている。アジア一コストの安いハブ空港としての活用も夢ではない。