借金を返すと儲かるのか?/岩谷誠治
簿記が必須となると、敬遠されがちな会計について、
経営企画や経理といった特別会計に関わる業務を行う以外の、
いわゆる普通の一般社員が使うという観点から会計を語る本。
会計の概要的な仕組みを分かりやすく伝えている。
ただこの本で書かれている本当に重要なことは、会計自体を学ぶことではなく、
日々の自分の業務が会計にどういう影響を与えるのか、といったことを意識することだ。
実際には、なんとなくで済ませているような「在庫が減るとなぜよいか」、「借金を返すとなぜよいか」といったことを事例として、会計の基本を学べる。
自分の活動が何に影響を与えるか、観測できないものは改善できないという精神から知っておくべきだろう。
【目次】
第1章 会計を学んで儲かるのか
第2章 商売の記録と決算書
第3章 パズルの絵
第4章 虚妄のキャッシュフロー計算書
第5章 普通の人が普通に使う会計
補章 30分で学ぶ決算書の読み方
【抜粋】
- 自分の行動は、自社の決算書のどの箇所に影響を与えるのか?を理解することが「動的な決算書」の本質である。
- 「借金を返すと儲かるのか?」という問いへの回答は以下の3つのレイヤーから答えることができる。
- 会計の公式は、資産と費用の合計を負債と資本と収益の合計とバランスさせる式。
- 資産と負債を相殺することで、利益は変わらないが、貸借対照表が大きくなる/小さくなるといった取引が存在する。
- 発生主義の観点から、費用が発生した際に計上する必要がある。しかし、その場合には対応する負債を計上する必要があり、それが引当金として表される。
- 会計の移項とは、会計の公式で定められた左右とは逆に移動させること。例えば貸倒引当金は、負債であるが、売掛金や貸付金といった資産に対して設定されるものなので、資産に計上しておいたほうが分かりやすいため、移項される。また、自己株式も、本来は資産であるが、実質的には資本を払い戻したことと同様の効果を生むため、資本の項へ移す。
- 会計の構造上、「資産」を購入した処理だけでは、利益に影響を与えることができない。そこで、「資産」を使用期間に対応して「費用」に振り替えることを「減価償却」と呼ぶ。
- 減価償却は、費用に計上されるものの現金の減少を伴わないため、そのぶんキャッシュが増加する。(減価償却分の資金が「残る」)
- 固定資産のうち、10万円未満のものは小額の固定資産として費用処理ができ、10万円を超えると資産として処理する。どちらが望ましいかは、経費予算と設備予算に応じて、状況に応じて決まる。
- 通常、仕入れた商品が販売されて回収されるまでのサイクルよりも、仕入先への支払いのサイクルのほうが短いため、売掛金と商品在庫の合計額は買掛金の残高よりも大きくなる。この差額を運転資金と呼び、通常借り入れでまかなう。
- 貸借対照表は以下の5つの要素に分けて考える。固定と流動を分けるのは1年という期間。(ワンイヤールール)
- キャッシュフロー計算書は営業活動、投資活動、財務活動の3つの区分の塊。営業活動によるキャッシュフローは大きければ大きいほど良い。