BCG戦略コンセプト/水越豊
BCGの提唱する競争優位のための戦略コンセプトを、6つの視点から解説した本。
BCGが発信し、定着してきた戦略コンセプトが紹介されている。
こうしたコンセプトを知っていると知らないでは、問題にあたったときの姿勢が変わってくるので、
知っているに越したことはないだろうが、やはり詳細は後から調べることができるし、意識のとっかかりとして持っておくという程度でいいのかもしれない。
改めて読み直すと、昔よりもより思うところがある。
やはり自分の経験とあわせて考えられるようになると、より効果のある読書にできるだろう。
本自体はとても分かりやすく、面白いものではあるが、これだけ読んで分かる、というのはどだい難しい分野なのだろう。
【目次】
第1章 競争優位の6つの視点 21世紀における競争戦略
第2章 株主価値 Value Management
第3章 顧客価値 Segment of One
第4章 バリューチェーン Deconstruction
第5章 事業構造 Product Portfolio Management
第6章 コスト優位 Experience Curve
第7章 時間優位 Time-Based Competition
【抜粋】
第1章 競争優位の6つの視点 21世紀における競争戦略
- 日本企業が競争優位を築くために突きつけられている問いは大きく3つある。
- 誰に対してどのような価値を提供して勝つのか(価値創造)
- どのような儲けの仕組みを構築するのか(事業構造)
- どのように勝ちパターンを永続させるのか(競争要因)
- 誰に対してどのような価値を提供して勝つのか(価値創造)
- 上記3つの問いに応える6つの視点は以下の通り。
第2章 株主価値 Value Management
- ドイツ、日本、韓国では従業員満足を重視してきた。これは右肩上がりに経済が成長し、企業はマーケットシェアを拡大することに邁進できたためである。こういった状況下では、企業は従業員に投資し、長期にわたってその力を活用しようとする。
- 株主に対するリターンを最も正確に表す指標がTotal Shareholder's Returnである。これはキャピタルゲインと配当利回りを合計したものであり、株主にとっての投資収益性そのもの。
- TSRに影響を与える要素は事業価値と配当原資の2つ。事業価値は、収益性(既存の資産の利益率向上)と成長性(投資により事業を拡大させる可能性)の2つから表され、配当原資はフリーキャッシュフローで表される。
- 外のモノサシであるTSRを最大化するために、内のモノサシとしてパフォーマンス指標・バリュードライバー・KPIを最大化する具体的な手法がバリューマネジメント。
- バリューポートフォリオの手法においては、ビジョンとの整合性、企業価値への貢献(TBR)を表すマトリクスであり、本命事業、課題事業、機会事業、見切り事業の4つにわける。
- 本命事業:資源配分を優先して成長を促進する
- 課題事業:事業構造を変革して、本命事業に近づける
- 機会事業:保有して資金源とするか、場合によっては売却する
- 見切り事業:資金投入を制約しつつ、撤退への道を探る
- 本命事業:資源配分を優先して成長を促進する
- バリューポートフォリオにおけるビジョン適合性診断のポイントは以下の3つ。
- 個別事業が企業の競争上の地位向上にどれだけ貢献できるか。
- 自社の組織としての能力の向上にどれだけ貢献できるか。
- 長期的視野で見たときに、その事業の存在が全社の企業価値を築いていくことにどれだけ貢献できるか。
- 個別事業が企業の競争上の地位向上にどれだけ貢献できるか。
- バリューマネジメントの実践手順は以下のとおり。
- 価値創造の現状診断:事業別貢献度、内部指標のカスタマイズ 等
- ターゲット、実行プラン策定:価値創造目標の設定、事業目標の設定
- 実行:トレードオフの意思決定実施、行動変革に向けたイニシアチブスタート
- 価値創造の現状診断:事業別貢献度、内部指標のカスタマイズ 等
第3章 顧客価値 Segment of One
- すべての顧客を大事にするという理念は市場が右肩上がりで成長している時代には理にかなっていた。どんな顧客でもそのうち大きな利益に結びつく可能性があったためである。
- セグメントワン戦略は、個々の顧客に対応するためのコストがITにより下がり、その効果が幾何級数的なものであるという発想に基づく。
- セグメンテーションのポイントは以下の3つ。
- セグメントを具体的に特定できるか?
- 説面とに効果的にアプローチできるか?
- アプローチしたうえでの効果的な打ち手があるか?
- セグメントを具体的に特定できるか?
第4章 バリューチェーン Deconstruction
- バリューチェーンでコンストラクションの4つのパターンは以下のとおり。
- バリューチェーンを見直すための3つのレンズは以下のとおり。
- 規模のレンズ:バリューチェーンのある部分をまとめることで規模の経済がきくか。
- 付加価値偏在のレンズ:コストの割に付加価値の低いところはないか。
- 顧客妥協のレンズ:消費者から見たときの不条理はないか。
- 規模のレンズ:バリューチェーンのある部分をまとめることで規模の経済がきくか。
- バリューチェーンの持つ意味は以下の4つに分類できる。
- トールゲート:料金をとって収益を稼ぐ仕組み
- イネーブラ:トールゲートへ誘導するための仕組み
- ブロックプレー:ライバルのトールゲートを封じ込める仕組み
- エンラージメント:トールゲートを築いた後に、その先に作られる新たな儲けの仕組み
- トールゲート:料金をとって収益を稼ぐ仕組み
第5章 事業構造 Product Portfolio Management
- 組織図上の業務単位とは異なる戦略上の分類として、SBUの重要性が高まっている。SBUを設置し、事業部を超えた連携をとり、目標達成をすることが求められる。
- 本社の役割とポートフォリオマネジメントの相互進化の経緯は以下のとおり。
第6章 コスト優位 Experience Curve
- エクスペリエンスカーブは、経験を重ねることでコストが下がる経験則であり、将来のコスト推論や競合他社の新規参入や自社の参入戦略の効果やコスト上の影響力を推測するにも役立つ。
- エクスペリエンスカーブは小規模自営業のケースや、成熟産業には当てはまらない。
第7章 時間優位 Time-Based Competition
- タイムベース競争に係る経験則は以下の4つ。
- 0.05-5の法則:
実際の皇帝の中で価値を生んでいる時間は0.05%-5%しかない。
- 3分の3の法則:
価値を生んでいない時間は、「前の工程の待ち時間」、「手直しにかかる時間」、「次の工程に進む決定までの待ち時間」に均等に分配される。
- 4分の1と2と20の法則:
サービス提供時間は4分の1に低減できる。資本、労働の生産性が2倍になる。コスト削減は20%に及ぶ。
- 3×2の法則:
タイムベースにより業界平均の3倍の成長率と2倍の利益率を実現できる。
- 0.05-5の法則:
- 根回しの工数は「深さ」と「数」のかけ算になっている。こうしたことを含めて意思決定にも工程の定義と目標が必要になる。
- 意思決定のクオリティを上げる3要因は、「情報」「時間」「メンバー」である。会議で配布される資料のレベルを上げ(情報)、それぞれの意思決定の所要時間を事前に決定(時間)し、誰がこの意思決定に関わるかを突き詰めて吟味する(メンバー)ことが重要である。