私塾のすすめ/斎藤孝、梅田望夫

教育学者である斎藤孝と、シリコンバレーで活動するコンサルタント梅田望夫の対談本。
ウェブ進化論を読んで、感動した記憶がある。この本を読んだのもずいぶん昔になってしまったが。

現実前提の安定志向では生き抜くことが難しくなった現代をサバイブするために、
自分をどうやって高めていくか、といった点について語られている。
ロールモデルとしての「あこがれ」をもち、ウェブや会社など、利用できるものは利用し尽くすという姿勢が重要と説く。
特に印象的なのは、世の中のほとんどのことはうまくいかない、うまくいかなくて当たり前の中で
一回の成功を味わい尽くして次につなげる精神が必要だというくだり。
自分を振り返っても、否定されることを恐れて、動けないことがたくさんあった気がする。
いつもうまくいくわけではない人生を楽しむために、あこがれのスタイルを作って邁進する、
そんな前向きな精神を身につけたいと改めて思う。


【目次】
第1章 志向性の共同体
第2章 「あこがれ」と「習熟」
第3章 「ノー」と言われたくない日本人
第4章 幸福の条件

【抜粋】

  • 見通す力のある人が、努力していって初めていろいろなことを達成できるという時代になってきていて、見通し力のない、ただのまじめさだけでは厳しい時代になってきている。
  • web時代に重要なことは、「個の強さ」と「自助の精神」が改めて大事になる。「学び続けることの大切さ」。
  • ロールモデル思考はあこがれる力であり、「存在のありよう」にあこがれるかが重要。例えば画家でもゴッホ的なスタイルもあれば、フェルメール的なスタイルもあって、全く別。
  • ロールモデル思考は外界の何かを「好き」だと思う自分の直感から始まる。「自分を否定して自分を探しにいく」ということの対極の考え方。
  • 会社に所属するときに「時期」で考える、区切りで考える。この3年、5年、この10年はここにいようと決める。3年、5年勤めればそこで獲得したことがアイデンティティになる。
  • 大組織は社会そのものだから、未熟な20代のうちは学ぶことの方が多い。「自分が組織から与えられるもの」と「自分が組織に対して与えているもの」の天秤が傾いたときに辞めるという判断になる。
  • 若い人たちがなぜ自己主張をしないか、ということの背後には「自己評価」と「他者からの評価」のすりあわせが得意でない、ということがある。
  • 「50人にあたれ」ということが重要。受け止めてもらえるのは、50人あたって1人。人間には好き嫌いがあり、たまたま相手が忙しい、今は迷惑だ、ということもある。
  • ものごとは、だいたいのことはうまくはいかない。だからこそ一個でもいいことがあったら大喜びする。世の中に対する諦観がベースにある。
  • ギリギリまでやった経験によって、自分にはそんなにたくさんのことはできないというような理解をした。突き詰めてやったことがないと、「やれば、これもあれもできるだろう」と甘く見る。