企業価値評価のすべて/KPMG FAS


企業価値評価業務の概要について書かれた本。
入門的な内容なので、実際の仕事で使うにはさらに細かい内容の本を読み込む必要があるか。


【目次】
第1章 企業価値評価を理解することが、なぜ大切なのか
第2章 企業価値評価を理解するための基本知識
第3章 マーケット・アプローチによる評価と実際
第4章 インカム・アプローチによる評価と実際
第5章 コスト・アプローチによる評価と実際
第6章 価値評価を行うときの留意ポイント
第7章 無形資産価値の評価と実際


【概要】
第3章
・事業価値に対する株価倍率には、売上高倍率、EBIT倍率、EBITDA倍率などがある。
 売上高、EBIT、EBITDAなどの財務数値は、金融収支が反映されていない、事業が生み出す収益力を表す
 これらを指標とした倍率は株式時価総額ではなく、金融収支の元本部分である有利子負債や現預金を調整したあとの事業価値と比較
・株式価値に対する株価倍率には、経常利益倍率、PER倍率、PBR倍率などがある
 他人資本である有利子負債に対する支払い利息を控除した後の損益であることから、株式時価総額と比較
・金融機関の場合、金融資産負債の運用によって利益をあげるため、純資産が重要。PBR倍率を使うケースが多い
 スタートアップの場合、損益が赤字であるため、売上高倍率を使うケースがある

第4章
・WACCを計算する際の資本構成のパターン
 1.対象企業が想定する将来の資本構成
 2.自社の資本構成
 3.類似企業の資本構成の平均値
 4.循環計算(DCF法で求めた株主資本価値を対象企業の株式時価総額と仮定)
・負債コストの算定方法のパターン
 1.事業計画における負債コスト
 2.現行の借入コスト
 3.格付と借入コストの関係
・金融機関をDCF法で評価する際にはエクイティ・アプローチをとることが多い
 エクイティ・アプローチでは、以下の要素が通常と異なる
 - FCFE:FCFのうち、株主に分配可能な分のみを用いる
 - 利益:金利を差し引いたEBTを用いる
 - 有利子負債残高の計画値を用いる(FCFEの算定に資本構成が必要)
 - 割引率には株主資本コストのみを用いる
 - 有利子負債残高の減算をしない(FCFE算定時にすでに考慮)

第7章
・企業結合会計に基づく会計処理は、対象企業の取得価格と純資産簿価の差額を以下の3つに割り付ける作業
 1.対象会社で認識済みの資産・負債の評価損益
 2.新たに認識される無形資産等の資産・負債の時価評価額
 3.のれん

企業価値評価 実践編/鈴木一功


DCF法を用いた企業価値評価の手順をケースから詳述した本。
用語や考え方については、入門書レベルのものを把握していることが前提となるが、
ケースを通じて実際の計算方法を理解できる。

企業価値算定の手順をStage1-4に分け、Stageを詳細化したStep1-20までに分ける。
それぞれについて考え方の説明を第1章で行い、第2章以降は実際のデータから計算を行う。

企業価値評価の理論を説明する本はたくさんあるが、
実例からの説明が最も充実しており、実際に自分でも表を作っていけば理解が深まるだろう。


【目次】
第1章 企業価値評価の実践プロセス
第2章 基本ケース-東京製鐵
第3章 事業部別ケース-カゴメ
第4章 詳細分析ケース-三共

【概要】
企業価値算定の手順>
Stage1 過去の業績分析
 Step1 財務諸表の再構成
 Step2 NOPLATの算出
 Step3 フリー・キャッシュフローの計算
 Step4 ROICの要素分解とバリュー・ドライバーの算定
 Step5 信用力と流動性の分析
 Step6 業績の詳細な分析
 Step7 過去の業績の総合評価
Stage2 資本コストの推計
 Step8 資本構成の推定
 Step9 株式以外での資金調達コストの推定
 Step10 普通株式による資金調達コストの推定
 Step11 加重平均資本コスト(WACC)の計算
Stage3 将来キャッシュフローの予測
 Step12 将来予測の期間と詳細の分析
 Step13 シナリオの策定
 Step14 シナリオの業績予測への転換
 Step15 複数業績予測シナリオの作成
 Step16 一貫性と整合性のチェック
Stage4 継続価値の計算と企業価値の算定
 Step17 追加純投資に対するリターン(ROIC_I)の算定
 Step18 継続価値の算定
 Step19 事業価値の算定
 Step20 企業価値の算定

MBA バリュエーション/森生明


企業価値の考え方の基本的な解説
2001年初版ということで古い本ではあるが基本的な内容は変わりない。
教科書的な方法と、実務的なステップを分けて説明しており、
概要レベルの記載としては、実際にどのように計算を行うか、といった点がイメージしやすい。


【目次】
基礎編 道具の理解 ―経営のグローバル共通言語
 第一章 企業価値という共通語
 第二章 企業価値を決める要因
 第三章 会社の値段と企業価値の違い

実務応用編 株価算定とM&Aの実務
 第四章 会社の値決めの実際1 -市場による評価
 第五章 会社の値決めの実際2 -会社を買収する場合
 第六章 M&Aによる価値創造のしかけ
 第七章 M&A現場の実況中継 -A社を買収せよ
 第八章 「良い」M&Aと会社経営


【概要】
第一章

  • 企業価値算定に必要な最低限のツール
    1. 現在価値 Present Value
    2. ディスカウントレート Discount Rate
    3. 永久還元(又は永続価値)の定義式 Present Value of Perpetuity PV = C/r
  • 将来にもたらされる金銭的利益は「もたらされる利益の額」と「支払いの確実性」という2つの要素に分解できる
  • ディスカウントレートはリスクの程度に応じて期待すべき投資利回り(期待収益率)

第二章

  • PERと現在価値算定式は同じ考え方を別の式で表現したものであり、PERはディスカウントレートの逆数に等しい
  • 定率成長の永久還元定儀式:PV = C/r-g (C:キャッシュフロー、r:ディスカウントレート、g:成長率)
  • PERは上記式を変形したもの:PER = PV/C = 1/r-g

第三章

  • 企業総価値を時価総額から算出するには、Net Debtを加える必要がある
    Net Debtは借入金から余剰資産を引いたもの

第四章

  • 類似上場会社の時価総額(会社の値段)とその会社の利益・キャッシュフローの数字との間の関係を倍率で示し、対象会社の値段算定に用いることが会社価値評価の中心部分の考え方
  • もっともよく使われるのは:EBITDA倍率 = (時価総額 + Net Debt)/(営業利益 + 減価償却)

第五章

  • 株式時価総額より低い値段がM&Aの適正価格となりうるのは大きく以下の2つのパターン
    1. 流動性のプレミアムを失う場合:会社を買収する場合、投資の流動性がなくなることによるディスカウント
    2. 株式の持ち合いによる「上げ底」がなくなる場合:日本市場では持ち合いによって株価が高く維持されている
  • DCF法における会社価値の変動要素
    1. 収支予想をどう作成するか
    2. どれほど長い期間の予想をするか
    3. その収支予想期間以降の事業価値(Terminal Value)をどう置くか
    4. ディスカウントレートをどう想定するか
  • 実務的な算定ステップ
      向こう5年間の事業計画を作成
    1. 最終年度における企業価値は類似会社から算定(EBITDA倍率、EBIT倍率)
      永久還元では出さず、5年後に売却して投資回収という想定を置く
    2. 類似取引事例で評価額を検証
    3. 企業価値を会社価値に修正(Net Debt分の調整)
  • 投資家に対して買収金額の妥当性を説明する指標の代表例が「Dilution effect(希薄化効果)」
    買収を行うことによって買い手会社の1株当たり利益が低下するかどうかをチェックする方法
  • つまり、買い手に新たに加わる資金調達コストと営業権償却という2つの財務費用の増加分と買収した会社があげる利益のどちらが大きいかを比較
  • 一般に、PERの高い会社がPERの低い会社を吸収合併すると、買収側の高い倍率のPERが適用され、会社価値にとってプラスになりやすい

第六章

  • 他の会社を買収する理由の代表的なものは4つ
    1. 単なる権力欲・支配欲
    2. 水平統合 - 競合を呑み込む
    3. 垂直統合 - 取引先を抱え込む
    4. 新規事業展開 - 時間を買う

第七章

  1. 将来キャッシュフロー計算
    • 5年収支計画をもとに将来のFCFを計算
    • FCF = NOPAT + 減価償却 - 設備投資 + 運転資金の増減
  2. 5年後時点の企業価値 Terminal Valueの計算
    • 類似会社批准方式のEBITDA倍率で企業総価値の想定を計算(幅を持たせて計算)
    • 無リスク金利を10年国債から援用、株式市場プレミアムはアナリストからデータを受領
    • ベータは幅を持たせて計算
    • 上記により、ディスカウントレートに幅を持たせる
    • EBITDA倍率とディスカウントレートの組み合わせでレンジ価格を計算
      • 価格の検証1
        • 類似のM&A取引と比較して買収プレミアムが妥当な範囲内か確認
        • 類似企業のEBITDA倍率と比較して、何%上乗せした金額かを計算
        • 一般的には支配権のプレミアムは30%などといわれる
      • 価格の検証2
        • Teminal Valueの金額を永久還元の計算式から検証
        • 成長率を計算し、整合するか検証
      • 企業総価値から株式買収価格を算出
        • Net Debtの調整
        • DDの結果反映

戦略的デューデリジェンスの実務/株式会社KPMG FAS

M&Aにおけるデューデリジェンスでの調査・分析事項の全体像を示した本。
M&Aが、妥当な価格で買うことが重要であるとしたうえで、
ビジネスデューデリジェンス、財務デューデリジェンスを中心に、
どのような分析を行い、結果をどのように価格に反映させるかを説明している。

デューデリジェンスのポイントが一覧化されており、実務としてどのような調査・分析を行う必要があるのか、
全体を把握する上ではリストとして役に立つと考えられる。

戦略的デューデリジェンスとして、包括的な領域を対象に、統合後を見据えたデューデリジェンスを唱えている。
とはいえ、内容としてはビジネス・財務を中心に、法務・人事・IT・環境を参考に記載といった配分で、
統合後の計画への反映という点については、ビジネス・財務等の領域ごとに統合計画に反映すべき点が例示されている。

統合後の計画への反映については、あくまでデューデリジェンスの視点からの記載であり、
実際に計画策定等を行う視点については、別の本で補完する必要がある。



【目次】
第1章 M&Aによる企業価値の創造とデューデリジェンス
第2章 ビジネスデューデリジェンス
第3章 財務デューデリジェンス
第4章 その他のデューデリジェンスと留意点
第5章 業種別デューデリジェンスの留意点
第6章 デューデリジェンスにおける発見事項とその対処
第7章 デューデリジェンスにおける発見事項とM&A後の統合プロセス

【概要】
第1章

  • DCF法で5年間の事業計画に基づくCFをベースに評価を行う場合、計算される価値のほとんどは6年目以降の「残存価値」。また、「残存価値」は5年目の損益状況をベースにその後の成長率を見込んだ永久還元法により算出することが多い
    ⇒計画5年目の損益状況がDCF法による計算で大部分を占める、計画の詳細分析が重要
  • ビジネスデューデリジェンスと財務デューデリジェンスは表裏。ビジネスの結果として財務があり、ビジネスの裏づけがなければ財務の将来計画もない。相互の連携が重要
  • 売り手側に立ったデューデリジェンスをベンダーデューデリジェンスという。売り手側が第三者的に想定される売却価格を算定し、障害を抽出、M&Aにおいて主導的なポジションを維持するためのもの。複数の買い手候補に対して報告書を配布することで、双方の負担軽減も図られる
  • 事業価値:事業のための資本を回転させることにより生み出される、その事業の価値
    企業価値:事業価値に非事業性資産・負債を加味
    株主資本価値:企業価値から外部調達資本部分を差し引き
  • ゴーイングコンサーン価値:事業・企業が今後も継続する前提の価値
    リクイデーション価値:清算した場合の価値
  • 実際に株式市場で観測されるベータ値は各企業の資本構成の影響を反映したレバード・ベータであるため、類似上場企業の実績ベータ値の平均を用いるような場合には、株主資本100%とした場合のベータ値に戻したアンレバード・ベータを用い、予想資本構成にあわせてレバード・ベータ化する

第2章

  • 基礎的事項
    1. 事業内容、事業の状況等
    2. 組織構造・ガバナンスと報告体系、内部統制
    3. 経営戦略、ビジネスモデル、KPI
    4. 生産体制、販売網と調達網、物流
    5. マーケティング
    6. 研究開発
    7. 経営陣、従業員の概要と人事報酬制度
    8. 各関連会社の位置づけと関連会社間取引
    9. 設備投資計画
    10. 事業計画と予算の策定手続、現状
    11. 過去の重要な調査
    12. 内部監査と外部監査の概要、結果
    13. 重要な会計方針、会計慣行
    14. 過去おおび現在進行中の組織再編、リストラの概要
    15. 株主総会、取締役会等の議事録
    16. 重要なコミットメントや偶発債務
  • 外部環境分析の手法
    1. 業界図
    2. Five Force分析
  • ビジネスモデル・内部資源の分析
    1. Value Chain分析
    2. アンゾフのマトリックス
    3. SWOT分析
  • 収益性分析
    1. 売上・売上原価・売上総利益
      • 売上高区分ごとの金額・構成比・成長率・利益率の時系列比較
      • セールスミックスの時系列比較
      • 返品・値引き・リベートに係る分析
      • 予算・実績対比分析
      • 顧客別・商品別販売平均単価推移分析
      • マーケットシェアの推移、ポジショニング分析
      • 製品・サービスの差別化、技術力の評価
      • 顧客に係る分析(集中度、大口顧客に対する売上推移、顧客の業況)
      • 代替品出現の影響評価
      • KPIに係る競合他社との比較分析
      • 売上原価の内訳分析、時系列推移分析
      • 製造原価の内訳分析、原価差額の分析、時系列推移分析
      • 仕入先に係る分析(集中度、大口仕入先からの仕入推移、仕入先の業況)
    2. 人件費
      1. 組織構造と人員配置
      2. 人員数、人員構成、給与水準、平均年齢の時系列比較
      3. 人件費の金額推移、1人当たり人件費・1人当たり売上高人件費率の時系列比較
      4. 対象会社の人事戦略
      5. 過去の大規模なリストラの顛末
      6. 競合他社との比較分析(1人当たり売上高、1人当たり人件費、売上高人件費率)と人員削減の余地
      7. 間接部門人員に係る分析
      8. 人事考課制度、インセンティブボーナス制度の評価
      9. 退職給付に係る制度および退職給付債務・費用の分析
      10. 労働組合との関係
    3. 人件費以外の費用
      1. 費用に係るKPIの時系列比較(売上高に対する広告宣伝比率、販管費率、減価償却費率)
      2. 固変分解と損益分岐点分析
      3. 予算実績対比分析
    4. 運転資金
      1. 運転資金に係るKPI(売上債権回転日数、在庫回転日数、仕入債務回転日数、運転資金の変動幅)
      2. 平均的な決済条件と売上債権回転日数、仕入債務回転日数の比較
      3. 顧客・仕入先ごとの決済条件
      4. 過去に行われた売上債権のファクタリングや証券化に係る情報
    5. 設備投資
      1. 過去の設備投資
      2. 過去における営業活性化投資とその効果
      3. 設備投資計画
    6. 企業の戦略を製品・市場、新規・既存のマトリックスであらわすのがアンゾフのマトリックス
      1. 市場浸透戦略:既存製品・既存市場
      2. 市場開拓戦略:既存製品・新規市場
      3. 製品開発戦略:新規製品・既存市場
      4. 多角化戦略:新規製品・新規市場
    7. 売上原価の内訳分析においては、製造原価以外の棚卸減耗損や滞留商品引当金繰入額、リベート、値引き等、原価性が認められる営業外損益として計上すべき事項が混入している場合もあるので注意
    8. 事業価値の計算に重要な運転資金の増加・減少を分析、その際には正常運転資金額が重要となる、売掛金等の売上債権、棚卸資産には不良再健也滞留在庫等、正常営業循環過程を外れたものが含まれていたり、支払いの遅れにより買掛金が膨らんでいることも多い

第3章

  • 回転期間分析:全体的な回転期間と主要顧客の回収条件を比較し、乖離がないか確認
    主要顧客の平均回収サイトを大幅に上回るようであれば売上債権残高に滞留債権が含まれている可能性がある
  • 売掛金の年齢調べ表(エージングリスト)から滞留債権を把握する:得意先ごとに債権が、ある基準日から遡って何ヶ月前に発生したかを示す
  • 原価計算制度の概要把握のためには、原価計算規定と勘定連絡図を入手し、どのような流れで原価が集計されているかを俯瞰的に把握し、費目別計算、部門別計算、製品別計算という順序で追う。
    1. 費目別計算:原材料費、労務費、材料費の区分が正しいか。
      労務費・経費と販管費との区分、予定原価の設定がチェックポイント
    2. 部門別計算:部門直接費、部門間接費の区分基準、予定原価の設定がチェックポイント
    3. 製品別計算:仕掛品の計算方法(原価の範囲に労務費や経費も含んでいるか)、進捗率の把握方法がチェックポイント
  • 運転資金は一般的には「運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務」であらわされる
    含めるべき項目に普遍的な定義は無く、通常の事業運営において、短期的に発生するキャッシュインフローとキャッシュアウトフローで構成されている必要がある
  • 株式取得の場合は対象会社の課税関係を引き継ぐ場合が多く、税務上検討すべき点が多いが、営業譲受の場合には税務上のリスクおよびベネフィットの移転はきわめて限定的となる、スキームが株式取得か営業譲受のいずれになるかによって税務デューデリジェンスの範囲は大幅に変わる

第6章

  • 対象企業の抱えるリスクによるディールブレークを回避するためには、買収形態の変更によるリスクの切り離し(税務リスク等)、表明保障や価格調整条項による売り手へのリスク負担の転嫁が考えられる
  • 価格調整事項は、クロージングまでの価値変動文について、価格に反映させる条項
    1. 純資産修正
    2. ネットキャッシュ調整
    3. 債務調整
    4. 運転資本調整
    5. Earn-Out調整:一定の財務目標達成時に書いてから追加金額を支払う(または逆)※用いられるのはまれ


外資系投資銀行のエクセル仕事術/熊野整


数字を扱い財務・会計周りの仕事をする人間なら必ず参考になるエクセルの実践的な本。
エクセルを見やすく、正確に、早く作るという観点でまとめ、
フォーマットをどのように作るべきかという体裁から始まり、
数値チェックの方法、ショートカット等の活用を実務レベルで解説する。

また、重点を見やすいことに置き、ショートカット等よりも先に、
一見細かい内容に思えるフォーマットの章を置き、その重要性を説く。

エクセルで計算をしたことがあれば、このフォーマットを作りこむことの重要性、
書いてある内容の便利さが実感できるはず。


エクセルの使い方に加えて、最後に考え方として数字で考えるためのモデリングの入り口の説明がある。
これを読んで、次にモデリングの本につなげてもよいだろう。

【目次】
第1章 見やすいエクセル きれいな表を作れなければ、信用されない
第2章 ミスのないエクセル 徹底的に正確な仕事のために
第3章 速いエクセル 質と量を同時に高めるテクニック
第4章 エクセルで数字に強くなる


新人SEのための会計&業務の基礎知識/岩谷誠治


SEの観点から、会計・業務・システムの3領域を説明した入門書。
システムに特化しているというわけでもなく、初歩的な会計・業務も説明しており、
管理部門の業務の概要理解や会計の基礎的な知識を得るには良い。



【目次】
第1章 会社・会計の構造
第2章 経理
第3章 営業部
第4章 購買部
第5章 経営企画部
第6章 製造部
第7章 人事部


【概要】

  • 親会社が議決権の過半数を所有:子会社
    議決権の20%以上50%未満を所有:関連会社
  • 組織図を見るポイント(組織のパターン)
    1. 本部制:各部門を職種別にくくって本部とする(営業本部、管理本部、製造本部等)
    2. 事業部制:組織を事業別に区分し、組織内の意思決定のスピードを向上
    3. カンパニー制:各事業部門を社内分社化し、独立採算を徹底
  • 内部統制の目的は以下の4つ。これらが達成されているという合理的な保障を得るために業務に組み込まれるプロセスを内部統制という。
    1. 業務の有効性及び効率性
    2. 財務報告の信頼性
    3. 事業活動に関わる法令等の遵守
    4. 資産の保全
  • 内部統制の構成要素
    1. 統制環境
    2. リスクの評価と対応
    3. 統制活動
    4. 情報と伝達
    5. モニタリング
    6. ITの利用
  • 決算時特有の仕訳を決算整理仕訳とよぶ。
    1. 減価償却費の計上:月次決算時は概算。年度決算時に確定した金額に修正
    2. 各種引当金の計上:期末時点の状況に基づいて繰入額を確定
    3. 費用の見越し・繰り延べ:当期認識・来期現金⇒当期に「見越し」、来期認識・当期現金⇒来期に「繰り延べ」
    4. 棚卸資産の評価:時価の変更に応じて評価額を変更
    5. 有価証券等の評価:同上
  • 試算表とは、記帳金額を集計して勘定科目ごとに一覧にした帳票。合計試算表(借・貸それぞれの合計)と残高試算表の2種類が存在。
  • 税務上は、減価償却費は損金と認めない。減損処理後は税務会計上と企業会計上で異なる帳簿価額を基礎に減価償却費計算を行う。
  • 引当金の4要件
    1. 将来における特定の費用または損失
    2. その原因が当期以前の事象にある
    3. 発生の可能性が高く
    4. 金額の合理的な見積もりが可能
  • 子会社は原則フル連結対象。子会社で重要性の低い会社、関連会社は持分法が認められる。持分法では、持分法適用会社の利益のうち、親会社が有している持分見合いの金額を投資有価証券/持分法投資損益の1行の仕訳で取り込む
  • 裏書手形(受け取った手形を自身の支払いに充てる)の場合、裏書手形勘定を使う。銀行への売却等による割引の場合、割引手形勘定を用いる
  • 生産管理の中心はMRP(Material Requirements Planning)。製品の需要量から、その製品を作るのに必要な原材料を計算し調達する仕組み。
  • ソフトウェアの会計処理は目的別に分けられる。
    • 研究開発目的⇒研究開発費(費用処理)
    • 販売目的
      受注制作⇒請負工事と同様
      研究開発相当分⇒研究開発費(費用処理)
      製品の制作原価⇒製造原価
      製品マスター制作費⇒無形固定資産
    • 自社使用
      将来の収益獲得または費用削減が確実⇒無形固定資産
      それ以外⇒発生時に費用処理

財務諸表分析入門/平林亮子


財務3表の分析方法を説明した本。
入門というところで図解、カラーでわかりやすさを重視している。
3表の基本的な構造や指標の理解に使える。


【目次】
第1章 財務諸表分析とは何か
第2章 貸借対照表とその分析
第3章 損益計算書とその分析
第4章 貸借対照表損益計算書
第5章 株主資本等変動計算書とその分析
第6章 キャッシュフロー計算書とその分析


【概要】
第1章

  • 財務諸表分析の4つの視点
    1. 収益性:株主にとっての株価・配当/債権者にとっての利払いの安定性/従業員にとっての給与
    2. 安全性:債権者にとっての債務不履行リスク/従業員にとっての給与支払いのリスク
    3. 成長性:株主にとっての株価・配当への期待/債権者にとっての利払い安定の期待
    4. 生産性:株主にとっての株価・配当への期待/従業員にとっての給与上昇の期待
  • 財務分析は、分析を通じて会社の状態を理解したり、会社の将来を想定したりすることが目的。そのための手法が比較。
    1. 期間での比較
    2. 他社との比較
    3. 業界での比較
    4. 目標値との比較
  • 財務諸表分析の限界
    1. 会計方針による差異
    2. 貨幣数値に反映されないものの捨象
    3. 過去のデータによる分析
    4. 文飾決算や利益操作
  • 連結財務諸表と個別財務諸表の違い
    1. 貸借対照表の純資産の部:個別では「評価:換算差額等」、連結では「その他の包括利益累計額」
    2. 連結では包括利益計算書を作成


第2章

  • 株主にとっての貸借対照表は、株主が最終的に処分することのできる権利がある会社財産の状況を表の左側に示す。反対に、株主が最終的に負担する義務がある会社にとっての負の財産を右側に示す。その差額としてNetで最終的に株主に帰属する財産、すなわち株主の持分が純資産として右側の下のほうに表示される。
  • 会社にとっての貸借対照表は、活動の原資を右側に、活動による運用状況を左側に表示したもので、会社資金の調達と運用の状態を表す。
  • 資産は3種類
    1. 流動資産:比較的短期間で資金として回収されることが予定されている資産(現金、預金、売掛金棚卸資産など)
      • 当座資産流動資産の中でもごく短期のうちに資金に変化する見込みの資産(現金、預金、受取手形売掛金など)
        短期的な支払財源として期待されており回収予定が狂う場合が問題となる
      • 棚卸資産:販売することで利益をあげることを目的として保有している資産
        販売という順序を踏まなければ資金の回収ができない、販売予定が狂うと資産本来の価値が失われてしまい、資産の不良化から資金回収力の減退を招く
      • その他の流動資産当座資産棚卸資産以外で1年以内に資金として回収される予定の資産(貸付金、立替金、未収金など)
    2. 固定資産:長期的に回収が予定されている資産(建物、機械、構築物、車両、工具危惧備品、土地など)
      資金回収は長期利用による営業活動への貢献の中から実現
    3. 繰延資産:直接的に回収しようと考えても、直接回収することのできない資産(創立費、開業費など)
      支出の効果が将来にわたって期待されるという理由から複数の会計期間に負担させる。資産を擬制されている
  • 負債は2種類
    1. 流動負債:比較的短期間のうちに返済されることが予定されている負債(買掛金や短期借入金など)
    2. 固定負債:長期的な返済が予定される負債(社債、長期借入金など)
      一般的に社債は3年以上の償還期限、長期借入金は5-10年
  • 純資産は以下に区分
    1. 株主資本
      • 資本金:株主から払い込まれた資金、資本金程度の財産は会社に確保しておくようにという要請の意味合い
      • 資本剰余金:株主から払い込まれた財産のうち「資本金」とならなかった金額
      • 利益剰余金:会社がその活動により稼いできた利益のうち社内に留保した金額
    2. 評価・換算差額等:資産を時価で評価したり外貨換算したりすることによって生じた計算上の差額、資産にも負債にも入れられない性格
    3. 新株予約権:株式を購入する権利、義務は確定していないので夫妻ではなく純資産に表示
  • 貸借対照表にない項目でありながら、会社の財政状態に影響を与える項目をオフバランス項目という。代表的なものは以下の2つ。
    1. 偶発債務:ある一定の事実が生じたときに会社の債務が発生してしまう事象(子会社の銀行債務について親会社が債務保証契約を結んでいる場合など)
    2. 後発事象:決算日より後に生じた事象で会社の財政状態に影響を及ぼす可能性のある事象(決算後に取引先が倒産した場合など)
  • 利益の配当や自己株式の取得等による純資産の社外流出の限度額を規定した剰余金の分配可能額の規制がある。分配可能額は剰余金の額から分配時の自己株式の帳簿価額等を控除して求める。
  • 安全性分析
    1. 正味運転資本=流動資産-流動負債:
      会社の運転資本の余力を示す指標。
    2. 流動比率=流動資産/流動負債:
      会社の短期的な支払能力、資金の余裕度を示す指標。150%程度あれば優良。
    3. 当座比率=当座資産/流動負債:
      資産の処分を前提としない支払能力、資金の余裕度を示す指標。100%以上あれば優良。
    4. 負債比率=負債/自己資本
      資金調達の側面からの安全性を示す指標。
    5. 自己資本比率=自己資本/総資本:
      安定性の高い自己資本の割合。資本効率の観点からは負債のほうがよい。
    6. 固定比率=固定資産/自己資本
      固定資産への資金の投入がどれくらいの自己資金でまかなわれているか、財務面での安全性を示す指標。100%未満が理想。
    7. 固定長期適合率=固定資産/(長期負債+自己資本):
      回収に長期間を要する資金投下に、返済が長期の資金がどれくらい割り当てられているか。100%未満が理想。
    8. 1株あたり純資産=純資産/発行済株式総数:
      株式の価値を表す
  • 貸借対照表の規模を時系列で見ることで成長性を分析可能


第3章

  • 売上原価は、棚卸資産の期首残高に当期に仕入れた分を加算して、期末残高を控除して算出する。期末棚卸残高を大きく計上することで、売上原価が下がることに留意。
  • 実効税率は課税対象となる所得に対して実際に負担することになる税金の比率、実績負担率は会計上の利益に対する税金の負担割合を示す。所得と利益に対する割合であり、両者は異なる。
  • 1株あたり純利益は会社の規模の対象にかかわらず、株主資本の有効活用度をあらわす。配当の分析を行う場合は期末の株式数、収益性の指標とする場合は期中の平均株式数を用いる。
    新株予約権社債などで将来の株式発行が予定されている場合、それらを考慮し、潜在株式調整後1株当たり純利益を出すケースもある。
  • Interest Coverage Ratioは金融費用の支払い能力ないし利息の支払における安全性の指標。利益にどれくらいの余裕をもって利息を支払うことができているかを示す
    (営業利益+受取利息)/支払利息


第4章

  • PL、BSを連携させる指標の意味合い
    • 資本回転率:資本1円あたりの売上。資本減少によって売上が横ばいでも増加する点に注意
    • 売上債権回転率:売上に対する未回収分の割合。回転数によって回収の早さを表す。
    • 棚卸資産回転率:棚卸資産に対する売上原価の割合。回転数によって棚卸資産が販売される早さをあらわす。
    • 仕入債務回転率:仕入債務に対する仕入高の割合。回転数によって仕入債務の支払いまでの早さをあらわす。
    • 交差比率(売上総利益率 × 棚卸資産回転率):売上総利益率と棚卸資産回転率のどちらに重点を置くかという施策検討に活用
    • ROA:総資本に対する利益の割合。売上高利益率×資本回転率に分解される。
    • ROE自己資本に対する利益の割合。ROAに、財務レバレッジの要素が追加。


第6章