管理会計/櫻井通晴

管理会計の続き。
第2部は企業の利益計画等、予算管理のあり方に関する章。
予算管理の基礎から、スループット会計までの流れを概観。

第3部は原価管理。コスト削減はもう少し実務に基づかないと理解が難しいか。

第4部は意思決定への管理会計の利用について。こちらも理論によりすぎて理解が困難か。

第2部

  • 利益計画の指標として、一般に投資利益率、期間利益額、売上利益率の3つの指標が知られている。中でも、投資利益率が最も理論的に優れた指標とされる。投資利益率は売上収益性を表す売上利益率と資本効率を羅和す資本回転率の積として表される最も総合的な指標だからである。
  • 日本企業で戦後の回復期から高度成長期にかけて最も多く用いられてきたのは、経常利益や営業利益などの期間利益額であった。十分な投資利益率が得られなくても、一定の利益さえあれば借入金によって積極的な投資をすることによって、インフレによるキャピタル・ゲインを得られたことが主たる原因と考えられる。
  • 結果に先行する先行指標のうち、注目されているものには次のものがある。市場占有率の伸び率、新製品開発比率、特許権出願件数、リサイクル率、工場の稼働率スループット、生産計画の達成度、業務改革の遂行度、製品の品質、納期順守率、顧客満足度従業員満足度など。
  • 予算を設定するのは以下の3つの目的による。
    1. 計画設定と責任の公式化
    2. 調整と伝達
    3. 動機付けと業績評価
  • 販売に関連する予算のうちで主要なものは売上高予算と販売予算(特に販売促進費)である。売上高予算は、経済予測、市場調査、販売分析を基礎に、予算期間の売上高を予測する。販売費予算は、販売促進費、物流費および販売管理費等に分けて編成する。
  • 売上高予算が編成されると、それにもとづいて生産計画が確定される。生産計画はまず数量で示され、期首在庫+生産数量−売上数量の関係から、期末在庫が決定される。
  • 製造費用予算は、生産計画をもとに直接材料費、直接労務費、直接経費および製造間接費といったように個々の原価要素別に製造原価が積み上げられる。直接材料予算が編成されれば、材料費の所要量が決定されるため、購買予算が編成される;.
  • 資金予算は財務予算とも呼ばれ、運転資本予算、現金収支予算、信用予算を内容としている。
    1. 運転資本計画:資金計画表を作成。資金計画表では、資金の源泉から資金の使途を差し引いて、運転資本の増減額が計算される。借入金の返済計画、増資計画、固定資産や在庫への投資計画が検討される。
    2. 現金収支計画:資金繰計画表を作成。前期繰越高に収入を加えて、支出を差し引くことによって収支過不足を計算。
  • 予算管理の欠点として以下の3点が挙げられる。
    1. 予算は弾力性に欠ける。
    2. 予算編成とコントロールには手間とコストがかかる。
    3. 経営の速度についていけない。
  • 全部原価計算では、直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費の全ての製造原価をもって製品原価を計算する。
  • 直接原価計算では、原価を変動費と固定費に区分し、変動製造原価だけをもって製品原価とする。製造間接費の配賦に恣意性が介入するという問題点が解決でき、利益が売上高と対応関係をもつために、経営者の思考に合致する。
  • 直接原価計算では、固定製造原価を製品原価に負担させない。つまり、固定製造原価は当期の費用として処理し、全部原価計算のように棚卸資産原価としては処理しない。そのため、全部原価計算と直接原価計算では、期首と期末の棚卸資産の差額だけ営業利益が異なる。
  • 固定費は物的・人的・組織的キャパシティを準備し維持することに関連して発生するキャパシティコストといわれる。キャパシティコストはコミッテドコストとマネジドコストに分類される。
  • コミッテドコストは、減価償却費、固定資産税、役員給料、賃借料、火災保険料のように物的・人的・組織的キャパシティを準備することから発生する原価。短期的には管理が難しい。
  • マネジドコストは、広告宣伝費や交際費のように経営者のポリシーによって決まるポリシーコストと監督者給料のように経営能力を維持することから発生するオペレーティングコストからなる。
  • TOC(制約理論)は、営利企業のような羅揺るシステムには少なくとも1つの制約があるので、その制約を排除することで以下にキャッシュフローを増大させてお金を儲けることができるかに向けられている。TOCにおける会計の核がスループット会計である。
  • ゴールドラットによれば生産システムで重要なことは、キャッシュフローの増大、業務費用の削減、在庫削減の3つ。
  • スループットはシステムが売上高を通じて貨幣を生み出す比率。業務費用はシステムが棚卸資産スループットに変えるのに消費するすべての貨幣。資産ないし在庫は販売を意図してシステムが購入するのに投資するすべての貨幣。

第3部

  • 標準原価計算の目的は能率管理。予算編成や価格決定をはじめとする経営意思決定に科学的基礎データを提供
  • 標準原価計算は以下のような条件の企業に適する
    1. 生産の標準化が行われ、生産条件のあまり変わらない企業
    2. 大量生産が行われている企業
    3. 労働集約的な企業
  • 標準原価計算の限界
    1. 生産条件一定という条件に合わない企業の増加
    2. 自動化により現場から作業員がいなくなった
    3. 品質への悪影響
  • 原価企画の主要目的は総合的な原価低減。経営戦略を実現するための利益管理の手段である。
  • 原価低減活動を生産の企画段階で行う(源流管理)
  • 営業費は、販売促進費、物流費、一般管理費の3つに区分される
  • 物流費の中心的な費目は輸送費、保管費、包装費

第4部

  • 意思決定とは、代替案のなかからの選択であり、以下のプロセスをたどる
    1. 問題の識別と明確化
    2. 問題解決のための諸代替案の探索と列挙
    3. 諸代替案の計量化ないし意思決定モデルの作成
    4. 諸代替案の評価
    5. 経営者による裁決
  • 意思決定のために行われる変動値のみについての分析を増分分析と呼ぶ
    増分利益=増分収益-増分原価
  • 増分分析にとって最も障害になるのは製造間接日と共通費の配賦。これは製造間接費の配賦率の計算や共通費の配賦計算が全体の製造間接費の平均値に基づくため。
  • 意思決定に用いられる原価の種類
    1. 機会原価:代替案のうちの1つを受けいれ、他を断念した結果失われる利益
    2. 増分原価:意思決定の結果変化する原価
    3. 埋没原価:意思決定に関係のない原価
  • 資本予算は企業の主要な投資プロジェクトの識別、評価、採択および資金調達をするプロセス。資本予算の3つの課題は、設備投資計画、戦略/意思決定、予算/資金の計画
  • 設備投資意思に関するキャッシュフローは以下の3つ
    1. 原投資額:設備投資計画案を実現するために必要な正味キャッシュフロー
    2. 年々の増分利益:設備の経済命数にわたって得られる年々の正味キャッシュインフロー
    3. 処分時の正味増分キャッシュフロー
  • 設備投資の経済性計算
    1. 原価比較法:代替案を比較し、原価の低い投資案を採択
      年額原価=資本回収費+操業費
    2. 投資利益率法:平均利益と投資額との関係比率から採択
    3. 回収期間法:当初の投資額を回収するのに要する期間が短い案を採択
    4. 内部利益率法:内部利益率の高い案を採択
  • 価格決定のアプローチは経済モデル、会計モデル、マーケティングモデル、統計的アプローチの4つ
  • すくい上げ価格戦略とは、市場の利益をすくい上げるほどの高い水準で、製品またはサービスの価格を決定する戦略
  • スライドダウン価格戦略とは、長期的に下方にスライドさせていく。
  • 浸透価格戦略は市場への参入を図ったり、既存市場でのマーケット・シェアを広げるために低い価格をとること