あなたの話はなぜ通じないのか/山田ズーニー
文章、会話をひっくるめたコミュニケーション全般について、どうすれば自分の思いを相手に伝えることができるのか、を書いた本。
文章術・会話術といった側面だけでなく、問題解決力、論理的思考力のような考え方の話から、日頃の信頼関係の重要性やその構築の仕方といった姿勢までを含めて書かれており、相手に話を伝えるための要素を広く、わかりやすく教えてくれる。
中でも、「問い」のコミュニケーションにおける重要性が特に面白い。
相手の「問い」を理解し、それを共有することで信頼関係を作る、自分自身何が言いたいかを明らかにするために「問い」を分解・構築する、それを表現するために「問い」→意見→論拠といった順序を意識する・・・といった具合に相手に伝えるための「問い」の重要性が多面的に語られている。
文章術としても問題解決本としても、よく分かる本。
人に勧めるときに「君の話は通じてないぞ」と伝えているようで若干気が引けるような気はするが。
【目次】
プロローグ 想いが通じる5つの基礎
第1章 コミュニケーションのゴールとは?
第2章 人を「説得」する技術
第3章 正論を言うとなぜ孤立するのか?
第4章 共感の方法
第5章 信頼の条件
エピローグ 通じ合う喜び
【抜粋】
プロローグ
- 話が通じるために押さえておくべき基礎は5つ
- 自分のメディア力を上げる
- 相手にとっての意味を考える
- 自分が一番言いたいことをはっきりさせる
- 意見の理由を説明する
- 自分の根っこの想いにうそをつかない
- 自分のメディア力を上げる
第1章 コミュニケーションのゴールとは?
- 「メディア力を高める」とは自分の聞いてもらいたいことを聞いてもら
えるメディアになること。
- 日頃の立ち居振る舞い・ファッション・表情。人への接し方、周囲への
貢献度、実績。何を目指し、どう生きているか、それをどう伝えているか?
それら全ての積み重ねが、周囲の人の中にあなたの印象を形作り、評判を作
り、ふたたび、「メディア力」として、あなたにまいもどってくる。
第2章 人を「説得」する技術
- 考えるスタートは「問い」の発見だ。正解のない問題を自分で考えたい
なら、まず、「問い」を探すことだ。
- 5W1Hの中では、WHY(なぜ)の問いは、たいていレベルが高い。だから早
い段階で「なぜ」の問いを立ててしまうと、考えが行き詰ってしまうことが
ある。WHYは核心を突くからこそ、ここぞというところに使おう。
- ミスがあった場合には、「自分がいいか悪いか?」という問いからのみ
答えを重ねても相手には伝わらない。「相手の求める問い」とはずれたとこ
ろで、どんなに言葉を重ねても話は通じない。
- 一発で話が通じる人は、相手の求める「問い」を逃さない。「ミスにど
う対処するか?」「ミスはなぜ起きたか?」「二度とミスを起こさないため
にどうするか?」相手の問題意識にかなった問いを立てて、コミュニケーシ
ョンできる。
- 時間軸・空間軸・人の軸にテーマを載せることで視野を広げることがで
きる。
- 「考える力」の基礎力は3つある、問題発見力、多角的考察力、論理的思
考力。ひらたくいうと、問いが立つ、いろんな方面から立つ、そして問いを
筋道立てて配列できるということ。
- いきなり結論で通じ合うには、ある程度の共通項が必要だ。共通の背景
、共通の価値観、共通のビジョン。これらが共有できない相手でも「問い」
なら通じ合える。
- 論理的に話すコツは、要するに「決め」だ。その「決め」が適確で、か
つ個性的であるほど、聞く人は意味を感じる。
- 問い→なぜ→意見。話だろうと、文章だろうと、短かろうと、長かろう
と、基本はこの形。
- 提案者はつい、「いかに自分の提案がすばらしいか」を力説したくなる
。しかし、相手の関心はそこにない。「その提案って、私に直接関係有るの
?あるとしたら、採用した場合、私にどんなすばらしいことが起きるの?」
という点に関心がある。
第3章 正論を言うとなぜ孤立するのか?
- 情報は、先に入った方が、あとの情報を規定する。私たちは、イメージ
惑わされ、情報に踊らされる。みな悪気があるのではない。ただ、選ぶ側の
疲れというか、持久力のなさというか。何かを判断するのにかける時間、手
間、意欲、粘りが、すりへっている。
- 人に何か正しいことを教えようとするなら、「どういう関係性の中で言うか?」を考え抜くことだ。それは、正論を言うとき、自分の目線は、必ず相手より高くなっているからだ。
- 上司との日ごろのコミュニケーションのポイントは以下の3点
- 相手の発信にリアクションをする
- 頼まれたこと、聞かれたことに誠実に対応する
- 他人のことなら自慢できる
- 相手の発信にリアクションをする
- 「共感」。この根本思想は上司の受診箱には、ありそうでなかなかない。たいてい賛辞になってしまう。同じ問題を語っていても、部下と上司は見ているものが違う。管理職が孤独を感じるのは、そんなときだ。
第4章 共感の方法
- 筋違いの批判をしてくる相手に、カッとなって我を忘れれば、相手に「ほら、怒った。やっぱりこの程度の器だ」と思われ、メディア力を下げるだけだ。
- 自分の身の丈を越えたもの言いは、逆に、自分というメディアのサイズを小さく見せる。自分以上の目線から話す人物を、周囲は、「自分の経験や力量さえわきまえられない人」と思う。
- 問題は、「言いにくいことをはっきり言う、言わない」ではないし、「相手を傷つける、傷つけない」でもない。問題は、メッセージをどう伝えるかだ。言いにくいことをはっきり言えたら伝わるとか、傷つけたら伝わるとか、伝えることはそんな簡単なものではない。
第5章 信頼の条件
- 言葉が無力だったのは、肩書きがないからでも、所属がないからでも、世間の理解がないからでもない。言葉が通じないのは、通じるだけの信頼関係がないからだ。会社にいたころ自由に言葉が届いたのは、会社が持つ社会的信頼の上に、16年にわたって築いてきた人との信頼関係があったからだ。
- 夢とWILLを分けるポイントは「時間」を入れること。時間を入れるには、そこに絡むさまざまな事柄への判断が求められる。期限を入れた以上、果たせなかったときも明らかだ。
- 信頼の条件のポイントは「つながり」だ。過去から現在そして未来へとつづく時間の中で、あなたの連続性が感じられること。人や社会とのつながりが見えること。
- 初対面の人とのはじまりに、自分の意志を置いてみたら、そこを「種」につながる人も、寄せられる情報も、きっと、自分を引き上げてくれる。今から未来に向けてどうしたいか、自分を「意志」で証明する。
- 一発で通じ合う力、会話を成立させるために最も必要な力とは「理解力」だ。最低限、「理解力」があれば、コミュニケーションの入り口のところで、すっとんきょうな会話をしたり、相手に不信感を植え付けたりする心配は無い。
- コミュニケーションの入り口で、すみやかに信頼をつかむには、「意志」で自分を証明する、「相手理解」に努める、相手から観た自分の「メディア力」を量りながら発言する、3つが有効だ。